日記映画

目黒シネマで『ウォールデン』を観た。通り過ぎていく日々をただ眺めて、衒うことなく映す日記とスケッチとノート。

常に模索すべきと言うが 私は目に映るものを礼賛するだけ 私は何も模索しない 幸福だ

流れてくる映像はぼやぼやしていて一向に像が定まらなくて鮮明に全てを覚えていることができない人間の記憶のようで、何の演出もなく、メカスの眼の前の風景の前に、人間も動物も状況も何もかもが隔てて目の当たりにするだけ。私性の強いものであるからこそ、日記はその隔たりが安心感を与えてくれるのかもしれない。

180分、人の記憶を追憶するのはすごく疲れた。

 

過去を思い出そうとするときの記憶の終着点として、思い出される光景がある。5歳くらいか、母親の実家に帰省して散歩しているとき、母親が昔好きで通っていたイタガキというパン屋に寄りパンを買ってくれたこと。店内のパンはビニール袋に入っていてその日出来立てだったことを物語るように結露がついていた。初めて好きなものを紹介してもらった記憶のようで憶えている。